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第2話:存在を知られたくない
相 談 概 要

中古商品を扱っている事業者がオークションに中古ノートPCを出品していたので、それを30,000円で落札した。妻に内緒で購入したので、直接自宅に送付されたくなかったため宅配便の集配所に送付してもらった。

しかし受領前に妻にばれてしまい解約するように言われ、仕方なく出品者に『ご迷惑料金5,000円を差し上げるので今回の取引はなかったことにしてもらいたい』旨を伝えたが、受け入れてもらえなかった。仕方なく妻のほとぼりが冷めるまで時間を置くことにした。 2ヵ月後、やっと妻の機嫌が直ったので妻の了解のもと、集配所に出向き受領した。

帰宅後電源を入れたところ、起動はしたがノートPCを持ち上げて動かそうとしたら、電源が切れてしまう。再度電源を入れ持ち上げても電源が切れる。ノートPCは使いながら持ち運びができなければ意味がないと思う。またディスクトップにはゴミ箱しかない。妻にも、この件を知られてしまい、収まったはずの怒りが再憤してしまい、非常に肩身の狭い立場に追い込まれてしまった。オークションIDも解約した。

そこで事業者に返品・もしくは交換、または修理代金の支払いを求めた。ディスクトップにゴミ箱しかない件に関しては設定で変更可能と知ったので解決したが、電源が切れる件に関しては、落札後2ヶ月近くたっているのでサポートできないとの返答だった。再度事業者として誠意ある対応をお願いする旨伝えたが、その後返答が無い。この事業者の過去の評価を見ると、商品が故障していた、といったクレームが多いようである。

処 理 結 果

当初の相談室での対応は、相談者の家庭の事情はわかるが、それは事業者側には関係ないことであり、商品受領後にかなり時間が経ってから発見された瑕疵について対応を求めると、その証明が困難で解決が難しくなることを伝え、事業者とメールで連絡が取れないようであれば書面にて通知してみたらどうかと助言した。それでも事業者より返答が無ければ再度相談室に知らせるよう伝えた。

相談者より、書面を出して10日経っても返答が無いとの連絡があったので、相談室から事業者に連絡を取って欲しいとのことだった。ただ、今後自分はこの件でやり取りするのが困難になったので、知人I氏を介してやり取りしたいとの申し出があった。
相談室では、プライバシー保護と又聞きによる誤解を避けるためにも、原則的に弁護士や法定代理人以外の代理人は認めていないことを伝え、再度相談室を介してのやり取りを希望するかを訊ねた。相談者から自分で行うとの意向があったので、相談室より事業者に連絡を取ることにした。
ただ、このとき、相談者は既に事業者とのメールのやり取りを全て削除しており、オークションIDも解約していたので、相談室では取引の詳細がわからない状態であった。その点、事業者側に改めて尋ねる形になった。

事業者側からはすぐの返答と取引の詳細の知らせがあったが、その内容は以下の通りであった。

  • 相談者から知らされた住所は宅配所の住所であり営業所止めになっている。連絡先電話番号も宅配所のものである。
  • 宅配所の話では、『営業所止めなので本人確認できる物を提示して頂かないと商品が渡せない事を伝えると、証明するものが無いと言われ受け取り拒否された。携帯電話に電話すると違う方が出られます』『妻に知られたくないから営業所止めにしている』との事である。その後発送伝票コピー提示にて商品を受け取るとの申し出だったので、メールに添付にて送付している。
  • 落札金額は25,000円である。ディスクトップにゴミ箱のアイコンしか表示されないのは、当該OSをインストール直後はゴミ箱しか表示されないからである。
  • こちらでは動作確認済みであり、2ヵ月経ってからのサポートには応じられない。

相談者に伝えたところ、その返答として『連絡先はどうしてもこちらには知られたくない事情があり、万が一電話でもかかってきたらその場で判ってしまう危険があった、ただ注文や購入に際して事業者には迷惑をかけず、ちゃんと商品代金も一括ですぐ支払ったはず』『営業所止めの件では、こちらは運転免許証も保険証も無く、身分を証明するものが無いから発送伝票のコピーが必要だった、そして1通目は誤って削除してしまい仕方なく再送してもらった』『30,000円といった金額の違いに関しては、正確な金額を忘れてしまい、今回相談室に依頼する際に大体の金額を伝えてしまった』とのことであった。
ただ、故障に関して事業者側にて動作確認済みで自信があるのであれば、まずはこのPCを返送し、それを確認の上故障の有無を判断して欲しいとの申し出があった。

事業者側では『返送料を相談者が負担するのであれば、こちらで確認することは可能、もし簡単なものであれば送料のみで修理する』『相談者本人か確認するためにも、本当の住所と連絡先等を全て明らかにすることが条件』との事であった。

それら内容を相談者に伝えたところ、相談者からは『返送料は誰が負担するのか、また確認後の商品送料は向こうが負担するのか』『修理費は向こうが負担するのか』等々のやり取りがあった。ただ、実際の商品の故障状況がわからないと、どちらに責任があるかとかどちらが費用負担すべきなのかは現時点ではわからないこと、事業者側の返答の文脈より、故障が簡単なものであれば事業者から少なくとも修理費の負担は求められないのではないか、といったやり取りを行い、相談者からは『とりあえず返送料の負担はする』との回答を得た。

しかしそれら数回のやり取りのつど、相談室から相談者に『個人情報を開示することに同意するのか』という質問を行ってきたが、相談者からはそれに関しての回答は無かった。  相談室から、再々度その点のみを確認したところ、相談者からは『個人情報の開示は事情があり出来ないので再度I氏に依頼したい、商品の返送先はI氏の住所にして欲しい』『対応がきちんとされれば、個人情報は関係ないのではないか』といった回答があった。

当相談室では、既に事業者側は商品そのものへの対応よりも、今までの相談者とのやり取りより『相談者個人を特定できない状態での対応は困難』という意識のほうが強く、その点が解決できれば事業者側の対応も柔軟になる可能性があるということ、一般的に見れば、その個人情報の開示がそれほど無理難題を押し付けているとは思えないこと、こういったネットオークション上での中古品の取引においては、あくまで双方譲歩の上の解決を目指しているので、相手方が全く呑めない条件での交渉継続は困難であることを伝えたが、最終的に相談者の理解は得られず、相談を終了とした。

解 説

相談室で相談を受け付ける際、名前や住所、電話番号など、相談者自ら入力する個人情報の項目はあるが、名前とメールアドレス以外の個人情報は必ずしも必須入力項目ではない。ただ、そのほかの個人情報を任意で取得するのは、メールアドレスが間違っている等、メールでの連絡が取れなかったときに他の連絡手段を確保するためである。ただ、相談を寄せる相談者の半分以上は、任意であるにも関わらず住所や電話番号を知らせてきている。 この相談者は、必須入力項目以外の個人情報は一切知らせてきてはいなかった。また取引における一切の情報を削除しており、結局、相談者の情報を含め、取引の詳細は相手方である事業者側より全て知らせてもらったという経緯がある。

本件は約2ヶ月間に渡り相談室にてあっせんを行っていたが、相談者が個人情報の開示を極端に避ける理由が最後までわからなかった。常識的に考えても相談者の言うような妻の機嫌が原因とは考えられず、あっせん時には既に妻の存在は一切出てこなかった。

紛争当事者が、それぞれ自らに不利益なことは話さず、自ら利益になることを誇張して主張する傾向にあることは、ある程度仕方ないことであり、それにより最初は多かれ少なかれ双方の主張に食い違いが発生する。しかし、それらは充分想定範囲内であり、それら主張を合理的、総合的に判断し、双方の意見をすり合わせていくのが第三者の相談機関の重要な役割でもある。

ただ、それとは別に、相談機関があっせんに入る際、相談者自身の個人情報や取引状況を、相談者側より充分聞き取りし、しっかり把握しておかないと、あっせんに入ったときに相手方に不信感をもたれる可能性もある。
この件では、相談者の個人情報や取引状況をほとんど得ずしてあっせんを行ったケースだが、結局、その相談者自身の個人情報の開示が最後までネックになり、解決が出来なかったものである。

相談機関におけるトラブル解決に向けてのお手伝いにおいて、相談者や相手方との信頼関係の構築が不可欠であり、少なくとも相談者との信頼関係を築けないと考えられるケースでは、その後あっせんを行っても解決は困難である。 相談者の『決済や商品のやり取りが正常に行われれば、個人情報なんてどうでも良い』という姿勢では、とても信頼関係は築けない。

この相談者、そもそも名前すら、果たして本当であったのだろか疑問が残る。